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まずは公的融資制度のメリットとデメリットについて知っておこう【第1回】

個人事業主の方や中小企業の経営者の方が初めて事業資金の「借入」をする際は、日本政策金融公庫や信用保証協会等の「公的融資制度」の利用を検討することが多いと思います。当記事では資金調達を初めてするという人が「公的融資制度」のイメージを掴めるように制度の概要を説明していきます。

「公的融資制度」とは

「公的融資制度」とは政府系金融機関や地方自治体等の公的機関が持つ融資制度です。実際の現場では「公的融資」「制度融資」等、様々な呼ばれ方をしているため、「ややこしい。分かり辛い。」と感じる人も多くいると思います。

制度として、いくつかの種類に分かれますが、まずは全て「公的機関が何らかの形で関わってくる融資スキーム」という点を押さえましょう。

「公的融資制度」のメリット・デメリット

公的融資制度のメリット

条件面で有利

公的機関が関わる融資スキームのため一般的な融資と比較して「金利が安い」「据置き期間が長い」等のメリットがあります。

創業資金にも対応

起業資金など一般的な金融機関ではハードルの高い、いわゆる「リスクマネー」に対応している商品もあります。

公的融資制度のデメリット

準備する書類が多い

地方自治体など、書類提出先が増える場合があり、準備する書類が多い傾向にあります。

審査に時間がかかる

起業資金等、実績のない状態の借入れであれば、それだけ金融機関側にとってもリスクのある貸出ですので、審査に時間がかかるというのは「公的制度融資」特有のデメリットというわけではありません。一般の融資にも同じことが言えます。

押さえておきたい3つのスキーム

政府系金融機関の「直接貸付」

政府系金融機関には下記のような組織があります。

  • 日本政策金融公庫(国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業) 
  • 商工組合中央金庫
  • 沖縄振興開発金融公庫
  • 日本政策投資銀行 ※大企業向け

個人事業主の方や中小企業にとっては日本政策金融公庫の国民生活事業・中小企業事業、そして商工組合中央金庫が最も利用しやすいと言えます。日本政策投資銀行等は大企業向けの融資を中心に行っています。

政府系金融機関は「制度融資」と呼ばれる貸出商品を有しており、借主である個人事業主や法人担当者は直接政府系金融機関の窓口に出向くことで調達交渉を行います。

「『政府系金融機関』の概要についてもう少し詳しく知りたい!」という方は中小企業庁のサイトで確認してください。
中小企業庁 http://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq19_kinyu.htm

「各金融機関の制度融資についてもっと知りたい!」という方は以下の各サイトで確認してください。
日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/
商工組合中央金庫 https://www.shokochukin.co.jp/corporation/raise/kind/government/

政府系金融機関の「代理貸付」

政府系金融機関の中でも日本政策金融公庫は「代理貸付」を行っています。

「代理貸付」とは政府系でない一般的な銀行(地方銀行等)が窓口になり日本政策金融公庫の持つ「制度融資」商品を「代理」で取り扱うというものです。借主は直接日本政策金融公庫に行かずに代理窓口となる銀行(地方銀行等)に出向いて調達交渉を行うことになります。

借主が日本政策金融公庫の制度融資に申し込みたいと思っても、お住いの地域によっては日本政策金融公庫の支店まで遠いということもあるかと思います。その場合はお近くの地方銀行等でこの代理貸の窓口がある可能性がありますので確認してみましょう。

信用保証協会の「保証付貸付」 + 地方自治体の「補助」

信用保証協会の「保証付貸付」

信用保証協会とは以下のような組織です。

‘‘信用保証協会は、信用保証協会法(昭和28年8月10日法律第196号)に基づき、中小企業・小規模事業者の金融円滑化のために設立された公的機関です。事業を営んでいる方が金融機関から事業資金を調達される際、信用保証協会は「信用保証」を通じて、資金調達をサポートします。47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)にあり、各地域に密着した業務を行っています。’’

一般社団法人全国信用保証協会連合会サイトより抜粋〜

信用保証協会の保証付貸付は個人事業主や法人にとっては信用保証協会に銀行借入れに関する保証人になってもらうイメージです。一般的に借入に際して信用力の低い起業時などは信用保証協会利用が検討されます。

借主はまず銀行窓口に出向いて融資交渉を行いますが、その際に信用保証協会利用が決まった際は銀行窓口だけでなく、信用保証協会宛にも書類提出などの手続きを行う必要があります。

地方自治体の「補助」

信用保証協会の保証付貸付を利用する場合、借主である個人事業主や法人にとっては銀行に支払う「金利」の他に信用保証協会に支払う「(信用)   保証料」が必要になるため金利負担が大きくなってしまいます。

【返済イメージ】
元金+金利+信用保証料

そこで各市町村(地方自治体)は信用保証協会に支払う「(信用)保証料」を借主に代わって一部(もしくは全部)負担してあげましょう/補助してあげましょうという「制度融資」を準備しています。但し、地方自治体の「制度融資」を利用することになれば、借主は銀行窓口・信用保証協会・地方自治体の3者に書類提出などの手続きを行わなければなりません。

なお、地方自治体の制度融資は各自治体独自のものですので、自治体毎に制度の有無や内容についてかなり差があります。例えば、保証料部分のみでなく、銀行に支払う金利を地方自治体が一部負担して優遇する制度も自治体によってはあります。

また、条件の一つとして税金などの滞納のない証明書などの提出を求められることが一般的です。

【例】東京都と大阪府の制度融資について書かれているページです。
東京都 http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/chushou/kinyu/yuushi/yuushi/list/
大阪府 http://www.pref.osaka.lg.jp/kinyushien/seido001/

補足説明

日本政策金融公庫の「制度融資」に関して、2種類いずれのスキームにおいても信用保証協会の保証利用はありません。例外として農林業に係る資金の場合は、農業信用基金協会という信用保証協会とは別の組織の保証付となる可能性はあります。

一方で、同じ政府系金融機関である商工組合中央金庫の場合は信用保証協会の保証利用の可能性があります。信用保証協会の保証利用の可能性があるということは地方自治体の制度融資(保証料の補助)の利用もあり得るということです。

まとめ

一見分かりづらい公的融資制度ですが、今回ご説明した3つの制度スキームを理解できれば簡単です。金融機関や地方自治体など、なぜこの組織と書類手続きが必要なのかが分かれば融資を受けるための仕事の段取りも組みやすくなるでしょう。

手間がかかる公的制度融資ですが、融資条件面でのメリットはその分大きいと言えるでしょう。

資金が必要な時期から逆算して、ゆっくりと準備に時間をかけられる場合はチャレンジする価値のある制度です。

以上、まずは公的融資制度のメリットとデメリットについて知っておこう【第1回】…でした。

当記事は、公的融資制度の基礎知識【全10記事】の第1回となります。是非ブックマークをして必要な時に読み返すようにしてみてください。

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学習院大学卒博士(サンフランシスコ州立大学)孔子経営賞 受賞(26年度)
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