経営者や個人事業主の方が初めて事業性資金(長期)の借入れをする段階で、借入れ期間中に繰上げ償還することを想定している方は少ないと思います。ただし、借入れした後、将来的に重要な問題になる可能性もあります。
今回は「期限前弁済手数料(=繰上償還に関する手数料)」について、基本的な部分のみまとめています。是非、確認してください。
期限前弁済手数料とは
期限前弁済手数料とは、借入金を借入期間中に、全額返済した場合に発生する手数料のことです。
例えば、「金額1,000万円、期間5年、金利2.0%」で借入していたとします。
借入してから3年後(残り期間2年)に借入金の残額を全額返済する場合に、期限前弁済手数料が発生します。
「繰上償還手数料、違約金」など現場では様々な表現で呼ばれています。
この期限前弁済手数料は商品によって無い場合もありますが、基本的にはあると考えてくだい。
期限前弁済手数料の根拠と計算
根拠
銀行は調達金利(お金を預金等で集める際に銀行が支払う金利)と貸出金利(お金を貸すことで得られる金利)の金利差で稼いでいます。
予定(当初契約)より前倒しで返済をされると、見込んでいた金利収入がその分減ってしまいます。そのため、「期限前弁済手数料」という、違約金の性質に近い手数料を徴求しているのです。
計算
上記例「元金1,000万円、期間5年、金利2.0%」「借入してから3年後(残り期間2年)に借入金の残額400万円を全額返済」の場合、銀行は400万円×2年×1/2×2.0%=8万円の金利収入を失うことになります。
ただし、単純にこの8万円が期限前弁済手数料ということではありません。
400万円×2年×1/2×(2.0%−銀行の調達金利)が「期限前弁済手数料」となります。
金融機関によって、また貸出商品によって、その算出方法は異なりますが、上記は基本となる考え方です。
例
下記は日本政策金融公庫のある商品の計算式の例です。この式にある「公庫が定める金利の差」とは公庫の調達金利とお客様への貸出し金利の差で、この金利が公庫の予定していた金利収入ということになります。
期限前弁済手数料=繰上償還額の約定期限までの平均残高×公庫が定める金利の差※×約定期限までの残期間(当算式は簡略式です。実際の金額は貸付契約の特約条項に基づき計算します。)
※日本政策金融公庫HPより抜粋
まとめ
事業性資金(長期資金)借入の際は「金銭消費貸借契約証書」という契約書を銀行と締結します。
今回ご説明した期限前弁済手数料についての説明も「金銭消費貸借契約証書」上に必ず記載がありますので、確認してみましょう。
まだ契約締結段階に無い方は、銀行担当者に確認しておきましょう。
以上、期限前弁済手数料とは?【第9回】…でした。
当記事は、公的融資制度の基礎知識【全10記事】の第9回となります。是非ブックマークをして必要な時に読み返すようにしてみてください。
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