当記事では創業を考えていて手元資金だけでは足りない事業者のための「創業計画書」についてと、最初に提出する先となる国民政策金融公庫の審査のポイントについてまとめてあります。
是非ご参考にしてみてください。
目次
そもそも創業計画書とは?
個人事業主もしくは法人として独立する際、資金調達方法として金融機関からの「借入」を検討される方が多いと思います。
初めて事業資金の「借入」を申込む際に、金融機関から提出を求められる書類の内の1つが「創業計画書」です。様々な書類の提出を求められますが、その中でも真っ先に融資担当者が目を通すものが創業計画書であり最重要書類の1つです。
創業計画書の中には「創業の目的」などの比較的書きやすいものから「事業の見通し」のような決算書の基礎的な知識が必要な項目まであります。
提出書類の中で最もボリュームのある書類の1つでもあります。
借入を成功させるためには
「借入」を成功させるためのファーストステップとして「創業計画書の基本的な構造」を理解する必要があります。
「創業計画書の基本的な構造」=銀行(融資担当者)は何を聞いているのか、何を聞きたいのかを理解しないままいきなり書き出しても融資を受けられるレベルの計画書は作れません。
計画書をいきなり書き始める前にしっかりと構造を理解した上で具体的に書き始めるようにしましょう。
創業計画書の基本的な構造
まずは実際の創業計画書に必要な記載事項を確認しましょう。
下記URLで「日本政策金融公庫・国民生活事業部」の借入申込み書類一式の書式がダウンロードできます。
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
借入申込み書類一式の中に創業計画書がありますが、この創業計画書を分解すると下記3点に分けられます。
【様式の項目】
- 「必要な資金と調達方法」欄 ⇒ 期初の貸借対照表(B/S)
- 「事業の見通し」欄 ⇒ 決算1期目以降の損益計算書(P/L)見通し
- その他 ⇒ 上記損益計算書(P/L)の実現可能性
上記の通り、創業計画書では決算書(期初のB/S・今後のP/L)がどうなるのか?を聞いているのです。
決算書の基礎的な知識がない方は簿記や会計の基本的な書籍を1冊程度読んでから書くようにしましょう。
なお、今回は「日本政策金融公庫・国民生活事業部」の「創業計画書」様式を利用して説明しますが、他の金融機関(地方銀行など)の様式も基本的な構造は同じです。
押さえておきたい審査のポイントは3つ
創業計画書のおおまかな構造を前段で確認しました。
次は「どのように書いたら良いか?」審査を通すためのポイントを確認しましょう。
審査を通すために最も重要な点は「事業の見通し」欄とその実現可能性をしっかり説明するということです。
ここでは3つの基本的な審査ポイントを押さえましょう。
なお、この審査のポイントは事業資金融資において基本的にすべて同じです。公的融資だから、プロパー融資だから、ビジネスローンだからというように融資制度によって審査のポイントが大きく変わるということはありません。
ポイント1 借りたお金を期間内に返せる計画であること
当たり前に聞こえますが、意外にもこの部分を満たしていない計画書を銀行に提出している方が多いです。
計画書にそもそも借りたお金を返せない収支計画を書いている場合が多いのです。
「貸したお金が返ってくるかどうか」を端的に表現しているのが創業計画書内の「事業の見通し」欄です。
これは決算書類の一つである損益計算書(P/L)を数期分横に並べたものです。
毎期のP/Lが以下のようになっていなければなりません。
「年間返済額」≦「キャッシュフロー」 (「税引後純利益」+「減価償却費」)
年間返済額未満のキャッシュフローしか生まないP/Lが並んでいる「事業見通し」を作らないように気をつけましょう。
「事業の見通し」欄でできちんと借りたお金を毎年返済していけることを表現しなければなりません。
ポイント2 実現可能性が高いこと
計画書内の「事業の見通し」が本当に実現可能かを丁寧に説明する必要があります。
その際のポイントは実績に基づいて作った「事業の見通し(P/L)」になっているという点です。
例えば、喫茶店を新規開業することをイメージしてみましょう。
あなたが「コーヒー1杯:1,000円×300人/月間=300,000円」の売上高となるP/Lを書いたとします。
融資担当者は「コーヒー1杯1,000円で本当に売れるのだろうか」と疑問に思い質問してくるでしょう。
その際にあなたが「新規店舗近くの商店街でコーヒー1杯1,000円をワゴン車で試験販売しました。
その際の売上高が〜」と「実績」に基づいて話せたら説得力が強いですよね?
「実績に基づいている」ということはそれだけ「実現可能性が高い」ということになります。
ありがちなのが「データ」および「理屈」に依存しすぎた説明をしてしまうことです。
上記のコーヒーの例で説明すると「ネットで調べたマーケティング調査の資料によると、喫茶店業界におけるコーヒー1杯の単価は上昇傾向にあり〜」というような説明です。
絶対にダメということではありませんが、これはあくまで「補足」的な説明の仕方です。
可能な限り実績に基づいて 事業の見通しを作成し、説明するようにしましょう。
POINT考え方の優先順位は
「実績」>「データ」>「理屈」
と覚えておきましょう
ポイント3 整合性や妥当性が認められること
計画書内の「創業の動機」や「経営者の略歴」等は端的に、できるだけシンプルに自身のことを話していきましょう。
ここでのポイントは整合性/妥当性の有無です。
例えば、これまでずっと看護師の仕事をしてきた方がやったこともない喫茶店を突然新規開業するのでお金を貸してくださいと申し込んできたとします。
あなたが融資担当者なら驚きませんか?
ずっと飲食店で仕事をしてきた方が満を持して申し込んできた方が納得感がありますよね?
これが整合性/妥当性です。
自身のキャリアを振り返って整合性/妥当性のある説明をしましょう。
【補足】
「お借入れの状況」等の個人のローン(住宅ローンや自動車ローン)を確認する欄もシンプルに説明しましょう。
ここでは個人の資質を問われています。
そもそも個人のお金の管理をきちんとできていない人に事業に関するお金の管理はできるはずがありません。
身の丈にあっていないような高級車のローンで四苦八苦しているような場合はもちろん厳しく見られるでしょう。
個人ローンの内容が身の丈にあっていて計画的に設定してあり、きちんと返済をしていれば基本的に大きな問題になることはありません。
まとめ
創業計画書は極端に言うと、「これから事業を始めようという人に対して、将来の決算書(特にP/L)を教えてください。
その実現可能性はどれだけ高いか説明してください。」と銀行側から質問されているということです。
初めて事業を開始するのでから、創業計画書を書くということは当然に難易度は高いです。
決算書の基本的な考え方も理解できていなければ記載することは難しいので基礎的な学習は計画書を書き出す前に進めておきましょう。
基礎的な知識を習得した上で、今回ご紹介した審査のポイント3つを押さえながら記載していきましょう。
以上、はじめての創業計画書作成と審査の3つの重要ポイントについて【第2回】…でした。
当記事は、公的融資制度の基礎知識【全10記事】の第1回となります。是非ブックマークをして必要な時に読み返すようにしてみてください。
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