融資を申し込むとき「担保」を求められることがあります。
担保があれば、借入額を増やすことができたり、利息の利率が安くなるなど、有利な条件で融資が受けやすいです。
ただこの担保。正しく理解しておかないと、あとあと不利な状況になりかねません。
そこでここでは、あるビジネスマンを例に出しながら、融資を受ける前に知っておくべき担保の基礎的な知識を紹介していきます。
ある男性(弘樹くん)が、葉山にある祖母の家をリノベーションしカフェを経営しようとしています。
リノベーションにかかる費用は金融機関から借りる予定。
でも、祖母から「融資のときは、この家を担保にしなけりゃいけないのかい?」と質問されました。
さて、不動産を担保にしなければ、融資は受けられないのでしょうか?
また、自分が所有していない資産(ここでは祖母の家)を担保に入れることができるのでしょうか?
目次
「担保」を正しく理解しないと不利な契約に気付けない!?
担保がなくても金融機関から融資を受けることは可能です。
しかし、1,000万円など大きな額の融資を申し込むときは、「担保なしでは貸せませんよ」と言われることがよくあるのです。
また、あなたの会社が赤字続きだったり、債務超過だったりすると「返済能力に問題あり」と判断されるため、「担保がないと無理ですよ」と言われることもあるのです。
貸し手(金融機関)としては、万が一あなたが事業に失敗して返済できなくなったときの保証が欲しいのです。
担保があれば貸したお金を取り戻せるため、安心してお金を貸せるのです。
担保は信用の代わりと言えるでしょう。
ただ「担保」について正しく理解しておかないと、不利な契約を知らずに結んでしまうことがありますので、ここでしっかり担保の基礎を知っておきましょう。
そもそも融資とは、金融機関とあなたの間で結ぶ「契約事(けいやくごと)」です。
契約事とは、両者の間で成立する法律のようなもの。
お互いに自分に有利に働く条件で契約しておきたいと動くのは当然のことなのです。
それなのに「専門用語が分からない…」「難しいことは面倒だ…」と金融機関の言いなりで契約を結んでしまうと、あなたに不利な契約を結びかないのです。
担保には「物的担保」と「人的担保」の2種類がある
担保には2種類あります。
- 物的担保(不動産や物を“借金のかた”にすること)
- 人的担保(保証人や連帯保証人をつけること)
尚、当記事では担保全般と物的担保を詳しく説明しています。
人的担保については下記記事をご参照ください。
物的担保とは、土地や物を“借金のかた”にすること
物的担保とは、万が一借金が返せなくなったとき「お金がないなら、代わりにその土地や家で払ってもらうよ」と土地や物で取り立てることができるよう、あらかじめ決めておくことです。
俗にいう“借金のかた”です。
これを少し難しい言葉にすると「不動産などの特定の財産に抵当権を設定する」と言います。
抵当権の設定とは、「返済不能になったら、指定された不動産や財産を優先的に取り上げますよ」と言える権利を設定することです。
銀行は、この抵当権を手に入れておきたいのです。
不動産を担保にするときは、金融機関と「抵当権設定契約」を結びます。
この契約は担保にした不動産の登録事項証明書(登記薄謄本)にも記載されるものです。
また、借り手は不動産を担保にしても、今まで通り使い続けることができます。
ただ、万が一返済不能になったら、その土地や家を強制的に取り上げられてしまうのです。
貸し手である金融機関は、担保である不動産を優先的に回収できる権利(=抵当権)を持っているのですから。
この回収行為を「抵抗権の実行」と呼んでいます。
たとえば、弘樹くんの場合。弘樹くんが祖母の家を担保にして、A銀行から1,000万円借りたとします。
でも、残念ながらカフェの経営に失敗して担保を取り上げられることになりました。
土地を時価は、1,200万円です。
このとき、実はB銀行からも1000万円の借金があったとします。
その場合、土地を売ったお金は、A銀行に優先的に支払われるのです。そして、残った200万円がB銀行に支払われるのです。
担保と抵当権はセットと考えておこう
不動産や物を担保にして融資を受けるとき、たいていの場合「抵当権」もセットでついてきます。
貸し手である金融機関は、担保となる不動産だけでなく「強制的に回収できる権利」も一緒に持っておきたいのです。
この抵当権。
貸し手ばかりにメリットがあるように見えますが、借り手にもちゃんとメリットはあります。
そのメリットとは、担保を手元においておける権利です。
家を担保にするなら、その家に今までどおり住める権利を借り手は持つことができるのです。
これが抵当権でなく質権になると、担保を手元においておけなくなるのです。
抵当権には「普通抵当」と「根抵当」の2種類がある
抵当権には、普通抵当と根抵当があります。
大きな違いは、下記の3つです。
普通抵当の場合
- 金融機関とあなたが「 1 対 1 」の関係
- 同じ担保を使って新たな借入はできない
- 全額返済したら抵当権は解除される
根抵当の場合
- 金融機関とあなたが「 複数 対 1 」の関係
- 同じ担保を使って新たな借入ができる
- 全額返済しても抵当権は解除されない
それぞれの違いを弘樹くんの例で話してみましょう。
「普通抵当」の場合
たとえば、普通抵当の場合。弘樹くんが祖母の家を担保にして、A銀行から1,000万円を借りました。
土地の時価は1200万円です。
1年後に500万円の返済が完了。
弘樹くんはカフェの内装をリニューアルしたいと、同じ土地を担保にして「今度は500万円の融資を受けたい」とB銀行に融資を申し込みました。でも答えはNO。
普通抵当の場合、500万円を返済したからといって、また500万円借りられるわけではないのです。
さらに3年後、借金を全額完済。この時点でA銀行が持つ抵当権は解除されるのです。
「根抵当」の場合
一方、根抵当の場合。
同じように弘樹くんが祖母の家を担保にしてA銀行から1,000万円借り入れました。
土地の時価は1200万円ですから「土地の時価(1,200万円)- A銀行への担保提供分(1,000万円)= 残り200万円」の差額が出ます。
この200万円は、他の銀行から新たに融資を受けるときの担保提供として使えるのです。
その後、1年後に500万円の返済が完了。
弘樹くんはカフェの内装をリニューアルしたいと、同じ土地を担保にして「今度は700万円の融資を受けたい」とB銀行に申し込みました。
答えはOKです。
「土地の時価(1,200万円)- (A銀行への担保提供分(1,000万円)- 現在の借入額(500万円))= 残り700万円」となるからです。
さらに3年後、残っていた借金をすべて完済。
すると、また同じ土地を担保にして借りることができるようになります。
根抵当の場合、1度抵当権を設定したら全額返済しても抵当権は解除されません。
そのため、何度でも融資が受けられるのです。
本人所有の不動産じゃなくても「担保」にできる
不動産を担保に入れるとき、抵当権を設定します。
この抵当権を設定するときは、借り手本人が持っている不動産を提供することが基本原則になってきます。
しかしながら、担保にしたい不動産の所有者が同意していれば、本人以外が所有する不動産でも担保にすることができるのです。
特に、根抵当の場合、貸し手と不動産の間で契約が交わされます。
そのため、「借り手=不動産の持ち主」でなくても良いわけです。
担保を求められるときは、何かしら借り手側に問題があることが多い
銀行などの金融機関が担保を求めてくるときは、だいたい「あなたの財務状態が悪い」か「事業計画に将来性が見込めない」かなど、なにかしら借り手側に問題が見え隠れするときです。
特に、起業したては、判断材料になる実績もありませんから、事業計画自体の実現性や可能性が問われます。
そのため、担保なしで融資を受けたいなら、実現の可能性が高い事業計画書を作るようにしましょう。
弘樹くんの場合、融資を受けられるのか?
弘樹くんの場合、祖母の同意が必要です。
同意が取れたら、祖母の土地を担保に入れて融資を受けることが可能です。
この担保があれば、借入可能金額が大きくなったり、利息の利率が安くなったり、より有利な条件で融資を受けることができるでしょう。
でも、万が一カフェの経営に失敗すれば、返済不可能になり祖母の家が処分されてしまいます。
そのため、経営努力を惜しまず頑張らなきといけませんね。
以上、普通抵当と根抵当の違いとは?融資を受ける前に知っておくべき担保の知識…でした。