銀行から初めて融資を受ける際には当然資料を用意して提出しますが、その際に、銀行側では融資先の格付けを行い、その格付けランクによって融資の可否や金利、返済方法等が決まります。銀行がチェックする項目は以下の5つです。
■プロパー融資(銀行からの直接融資)が可能かどうか?
■無担保で融資できる上限額の設定はどのくらいか?
■返済方法は許容できるか?
■融資の決済が支店長か本部の審査部で行うか?
■金利の設定はどのくらいか?
当記事では、銀行の融資先企業の格付けランクについてと格付けランクを決めるための方法についてまとめました。これから銀行融資を申し込もうと考えている事業者の方は是非参考にしてみてください。
銀行内の格付けランクについて
銀行毎に多少異なりますが、基本的には銀行の格付けについては以下のようにランク分けされています。基本的にランク1~2までが融資を受けられるランクで、ランク3以下は追加融資は難しいと判断されます。
格付け | 内容 | 銀行の融資スタンス |
【ランク1】正常な企業 | 業績に問題が無い企業 | 積極的に融資 |
【ランク2】要注意すべき企業 | 業績が不安定または悪化して座無内容に問題ありの企業 | プロパー融資はNG。保証協会付融資ならばOK。 |
【ランク3】要管理すべき企業 | 主にリスケを行っているような企業 | 追加融資はNG。基本的に融資の残金の回収を優先。 |
【ランク4】破綻が懸念される企業 | 経営難に陥っており、破綻の可能性がある企業 | 融資対象外 |
【ランク5】実質的に破綻しているような企業 | 特に深刻な経営難に陥っている企業。 | 融資対象外 |
【ランク6】破綻企業 | 法的にも経営破たんの状況がみられる企業 | 融資対象外 |
格付けランクが下がると影響する4つの項目
銀行内での自社の格付けランクが下がることで、以下の4つの項目に影響がでます。
決裁権限が支店長から本部の審査部に変わる
格付けが正常な企業の場合、支店の支店長による決裁だけで融資を受けられますので、融資実行までの時間がそれほどかかりません。また、支店長に社長自身の熱意やプレゼンのパフォーマンスを直接アピールできますが、本部の審査部での融資判断となると、提出する書類ベースでの判断となってしまいます。
本部の審査部判断となると、担保の提供を求められたり、追加資料の提出を求められる場合もあり、一般的に融資審査が厳しくなります。尚、今まで遅延なく融資の返済ができている企業の場合でも、追加融資を申し込んだ際に、格付けランクの影響で、本部の審査部での決裁に変わる場合もあります。
金利が上がる
格付けランクが下がると金利が上がってしまいます。銀行は格付けランク別に倒産確率を数字ではじき出しています。格付けランクが低いほど、倒産リスクが高くなり、貸し倒れになる確率も高まるため、金利を上乗せします。
また、格付けが下がることで、金利以外にも追加担保を要求して、銀行側の保全を第一に動きます。
プロパー融資が難しくなる
格付けランクが下がると銀行からの直接融資であるプロパー融資はほとんど不可能となります。もし融資先が倒産した場合、銀行側が回収できなくなり、リスクをすべて許容しなければならないためです。格付けランクが低い企業に対して銀行は、100%保証協会付融資なら銀行側のリスクが無いので、融資の実行したいと考えています。
返済方法が変わる
自社が毎年融資を受けていて、しっかり返済できていたとしても、借り換えのタイミングで返済を求められることがあります。銀行としては、貸した金を確実に回収したいので、格付けランクが下がって、回収リスクの高まった融資先企業から一旦返済を求められることもあります。
格付けランクの決まり方
それでは銀行が行う格付けランクがどうやって決まるのか具体的な方法についてご説明いたします。基本的に企業側から提出される書類の中の貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)が大きなウェイトを占めます。
貸借対照表(B/S)
銀行側は貸借対照表の中のそれぞれの科目を細かく精査していき、会社の本来の自己資本「実質自己資本」を算出します。というのも銀行側は中小企業の貸借対照表が帳簿記載通りの資産価値を示していないと疑っているのです。
原稿側がチェックする主な科目は以下の通りです。
チェックされる勘定科目 | 企業側がすべき対策 |
現預金 | 融資してほしい金額と比較して、あまりにも少ないと評価が下がるので、保有しておくことがベター 但し、現預金が多すぎると粉飾操作をしていると疑われる可能性有 |
棚卸資産 | 在庫の中身の説明ができること。そして、適正な在庫量の確保があることが重要 |
売掛金・受取手形・未収入金 | 定期的なサイクルで、早期に回収がしっかりと行われていること |
仮払金・立替金・貸付金(短期&長期) | 早期に社長個人の現金で返済すべき |
建物&土地 | 建物は減価償却が適正に行われていること。そして、建物でも土地でも、本業に無関係のものは早期売却する計画を提示 |
株などの有価証券 | 本業に無関係のものは早期売却する計画を提示 |
創業費用・開発費用 | 法的償却年数で償却する |
役員からの借入金 | 資本へ振り替える |
現金が多すぎるのは粉飾していると疑われる可能性大!
銀行預金は、通帳を記帳すれば確認できますし、銀行が正式に発効する残高証明書でも確認できますが、現金にはマーキングができません。そのため、銀行側からすれば現金が余りにも多い場合、企業側が「粉飾操作」していると疑う可能性が高くなります。
但し、業種によっては、アルバイトへの現金手渡しやお店で現金が必要という場合もあるでしょう。そのような正当な理由がある場合は、それを証明できるような資料も用意するようにしましょう。
売掛金の回収はちゃんとできているかチェックされる!
取引先への売掛金は実際に自社に支払われていない債権ですので、銀行としては、いくら売掛金があっても、本当に回収できているのかチェックしてきます。そして、もし特定の売掛先の残高が決算を跨いでも動いていない場合は、「焦げ付き=不良債権」と判断して含み損失として評価されます。
格付け評価を下げたくないなら、焦げ付きと疑われるだろう売掛金を早期に回収すること、または銀行へ当該売掛金は焦げ付きではないと証明できる資料(例えば、その売掛先との支払条件を取り決めした契約書等)を用意する必要があります。
棚卸資産の内容を説明できるようにする!
在庫を保有する必要のある企業の場合ですが、棚卸資産の科目がチェックされます。そして、銀行側はこの棚卸資産が業界平均値よりも多い場合、その分の価値を差し引かれて格付け評価されます。もちろん、在庫を保有しなければいけない企業毎の事情があるので、その個別の事情を説明ができる資料を用意することが肝要です。
貸借対照表では1つの在庫として数字だけ記載されます。これだけでは銀行側に在庫の内訳を説明しようがありませんので、在庫の内訳がわかり、その理由を説明できる書類を用意しましょう。
仮払金・貸付金等があるとマイナス評価!
銀行にとって、融資を申し込んできた会社の貸借対照表に仮払金や立替金、貸付金が計上されていると不良債権として格付け評価の中でマイナス評価をされます。要するに、会社が外部に対して資金を流出させていると判断されるためです。
尚、中小企業の社長が良く行う、自宅購入費等のために貸し付けている場合も多くあります。そのような場合に銀行側の格付けランクをマイナス評価されないようにする方法は以下の2つを証明できるようにしましょう。
定期的な返済が行われていることを証明する
提出する決算書の複数年分を並べて、毎期ちゃんと貸付残高が減っていることを説明できるようにしましょう。
自己資本の中で行われていること
自己資本の中で貸し付けが行われていることが必須です。もし、前回の融資で調達した運転資金の中から、社長への貸付を行っているようなことが発覚すると、資金の使途違反となり、その後の融資を受けることが圧倒的に不利になります。
建物は適正な減価償却がされているか、土地は本業との関係の有無をチェックされる!
建物やその他の設備は減価償却をちゃんと計上しているかチェックされます。確定申告書の中の「固定資産台帳」と「別表16(2)」に償却不足金がある場合は、その分を差し引いて評価されます。
また、土地に関しては本業に活用されているかをチェックされ時価で評価されます。もし、栃を時価で評価した時に含み損があり、その上に立っている本社や工場等の不動産にも含み損があった場合、不動産の含み損に関しては、評価の対象にはしません。本社や工場を売却することは事業を続けられなくなるので、すぐに売却しないと判断するためです。
一方、投資目的の不動産の場合は、時価と簿価の差額をチェックされて、もし含み損があるようだと、その分を差し引いて評価されます。また、別荘なども本業を続けるうえで本当に必要かどうか疑わしいため、差し引かれる可能性があります。
有価証券に関してはマーケットの時価で評価される
株式等の有価証券の場合、上場企業株の場合は、その時点の株価で評価されます。非上場企業の株式の場合は、帝国データバンク等でチェックされ評価されます。尚、もしグループ会社等があり、その企業へ出資している場合は、その出資先企業の決算書の提出も求められる場合もあります。
創業費や開発費等は法廷償却年数で償却されているかチェックされる
創業費や開発費などのいわゆる繰延資産に関しては、ちゃんと法廷償却年数(だいたい5年)で償却処理されているかどうかチェックされます。もし償却不足がある場合は自己資本から差し引かれます。
損益計算書(P/L)
貸借対照表と並んで銀行側が融資の判断をする際にチェックするのがこの損益計算書です。損益計算書で一番見られるのが、その企業の「実質的なキャッシュフロー」についてです。この実質的なキャッシュフローが多く毎月安定的な場合は、格付け評価はあがります。尚、銀行は通常は3期分の安定性や増減をチェックして、直近の実績値と3期の平均値のうち、低い数字を格付けの判断材料にします。
雑収入や特別利益は評価UPの対象外に!但し、不動産収入など定期的なものは評価
税金の還付や保険の解約返戻金等は一時的な収入なので、格付けUPのための評価対象になりません。但し、不動産等の毎月の安定収入の場合は、格付け評価UPになります。
以上、銀行融資の審査を100%通すために知っておくべき情報【格付けランクについて】のまとめでした。また、実際の銀行内部のことや提出書類については下記記事を是非ご参考にどうぞ。
【併せて読みたい記事】
銀行融資の審査を100%通すために知っておくべき情報【銀行内部編】
銀行融資の審査を100%通すために知っておくべき情報【提出書類編】
銀行融資の審査を100%通すために知っておくべき情報【格付けランクについて】
銀行融資の審査を100%通すために知っておくべき情報【貸借対照表編】
銀行融資の審査を100%通すために知っておくべき情報【損益計算書編】
尚、銀行からの融資を受けるには最低でも1か月以上、初めての場合は2か月はかかります。もし、500万円から1000万円程度の資金確保さえできれば資金繰りが改善できるようなら、スピーディに資金調達できるビジネスローンで一時的に資金手当てすることも検討しましょう。
ただし、ビジネスローンも種類は非常にたくさんありますので、一つ一つの審査申込は大変です。当サイトで一番のオススメが日本全国からオンラインですぐに申込審査ができるビジネスローンです。「資金繰り大丈夫かな・・」と少しでも不安に思われるならば、今のうちにビジネスローンの審査を通しておいて、資金調達ができる選択肢を広げておくべきでしょう。融資枠さえ確保しておけば良いので、すぐに借りる必要はありません。以下の大手ビジネスローンはオンライン手続きのみで10分程度で完結します。一度審査が通れば、500万円程度の資金は最短翌日には調達できます。
・AGビジネスサポート 審査によりますが、1万円〜1,000万円まで融資可能 ※新規取引時は上限500万円
さらに詳しくAGビジネスサポートのサービスにについて詳細を知りたい方は以下の記事もご参考にどうぞ。
事業者向けローンの最大手・AGビジネスサポートの特徴
AGビジネスサポートへの融資申し込みと返済方式
尚、以下のような事業者の方で、どうしても資金調達が必要な方はビジネスローンと平行してファクタリング(売掛金の早期売却)の利用をおすすめします。
・様々な事情で金融機関からの借り入れによる資金調達が難しい方
・すぐにつなぎ資金が必要な方
・創業後、1年以上の営業実績が無い方(決算が終わっていない方)
・税金未納がある方
・赤字決算の方
特に赤字決算の場合は銀行との今までの取引関係もあり、追加融資が可能な場合も多々ありますが、税金未納の場合は、銀行は絶対に融資をしてくれませんのでファクタリングしか方法がないかもしれません。日本ではまだまだ知名度の低い資金調達法ですが、経済産業省も推奨している100%合法の資金調達スキームです。ちなみに米国ではおよそ15%の利用に対して、日本では1%程度です。
法人個人事業主問わず、毎月法人の取引先に対して安定した売掛金がある事業をしている事業者は、売掛金を早期にファクタリング会社に売却して資金調達を行えます。売掛金があれば、最短翌日に資金調達をすることも可能です。こちらのフォームで資金調達額の目安がすぐにわかりますので今すぐ簡易診断してみてください。