親族経営のブラック企業に勤めていたHさんのお話です。
私は以前食品会社に勤めていました。
その会社は地元でも悪い方で有名であり、社長の父親を筆頭に、専務に長男、常務に次男、部長に三男と家族で経営している会社でした。
その為自分達に注意するような人間が上にいないせいかやりたい放題で、まさに無法地帯でした。
会社の売り上げはそのまま自分達の収入として使い込み、社員への給料分が足りなくなった場合は社員に対し誰でも捏造とわかる根拠の無い言いがかりをつけ、それに伴い給料を半減するという非常識さは日常茶飯事。
食品を製造する際、ガスバーナーが数百本取り付けられた巨大な鉄鍋を利用するのですが、衛生面から部屋を閉め切るため熱の逃げ場が無く室温が冬場でも50度を越え、バーナーの直ぐ上に体を乗り出して作業をするため直火で体が炙られるので体感温度は更に跳ね上がります。
作業には3人が最低必要なのですが、経費削減と称し人材を募集することは無く私を含めてぎりぎりの人数の3人で仕事をしていました。
休憩がしたければ他の部署から私たち自身が代わりの誰かを見つけて来ないと休憩ができない状態。
その為満足に休憩ができず、灼熱の中10時間も休憩なしで作業をさせられることも多々ありました。
冷房などの装置も置かれることも無くただただ体を焼かれるようなものなので熱中症になり体には震えや痺れが見られ、医師には仕事を続ければ命の補償もできないと告げれられるほどに。
しかし、それを専務に伝えて返ってきた言葉は「泣き言は言うな。まだ生きてるじゃないか」という非常なもの。
しかもこういう言葉を吐いた幹部達兄弟は仕事場には全く顔を出さずに冷暖房の効いた快適な事務所で終日オンラインゲームをしているだけの状態。
実際私がこれらの熱中症の症状を伝えた時もパソコンでマージャンゲームをしながらこちらに目を向ける事もせずに聞いていました。
更にはその私に対し、「甘えた事を言って調子に乗るな。部長に言ってボコボコにしてやってもいいんだぞ」と暴力を使った脅しをしてくる始末。
部長は暴走族やプロボクサーと言う過去があり、3兄弟の中でも特に非常識で荒れた人間で、実際に何人もの社員やバイトが暴力を受け体や心に傷を負い会社を後にする事がありました。
今度は私がそういった対象になったようで、その日から誹謗中傷なども受けるようになりました。
「馬鹿」「死ね」「カス」等という子供のようなものからとても口に出せるような人を人とも思わない下卑た言葉を躊躇い無く吐くさまに会社の未来は無いと悟りました。
この頃から、私は証拠としてボイスレコーダーや暴力を受けてできた痣等の写真を残すようにしており会社の内部事情を晒すための準備をしていました。
こういった社員への対応の他、食品自体も記載された成分や材料等の偽りや衛生面を無視したずさんな管理、免許なしでの危険物の扱い、不良品で返却された商品を消費期限を書き換えて再度別の会社に商品として提出するなどの横暴さを全て証拠に取り、十分な準備が整った所で会社を退社し、市にこれらの内部情報を提出しました。
程なくして会社にはメスが入り、幹部の人間はそれぞれが罪に問われる事となり会社も経営を続けることは不可能とし倒産となりました。
私達社員が皆で決めて告発したことなので倒産によって負荷を負うような人間は誰もいませんでした。
また、このような好き勝手をしている会社なので取引先等の周りからの評判も元から悪く、経営は苦しい状況にあったのでそれに私達が止めを刺した感じでした。
しかし会社がなくなったとしても非常な仕打ちを受けた社員の傷は癒えることはありません。
経験者としてこういったブラック企業がなくなることを切に願うばかりです。