倒産確定でうつになった社長
倒産時の社長の異変についてFさんの体験談を伺いました。
私が勤務していたのは地方のしがない町工場でした。
ビニールをつくっている会社だったのですが、最近は他の企業におされてしまい、経営は困難で倒産の年はボーナスは一斉支給ではなく、年功序列制で少しずつ振りこまれるという形でした。
社長はとても優しい人柄だったので、みんなボーナスのことにも特に文句を言わず受け入れていました。
しかし、やはり経営は困難を極め、ある日社長が朝会で当日出勤している従業員に土下座をしたことで倒産確定が発覚したのです。
会社をたたむその日までの残りわずかな日数の間、社長は人が変わったように泣いたり頭を抱えたり怒鳴ったりするようになりました。
明らかに精神的に不調をきたしているようで、錯乱状態とはこのような状態のことをいうのかと私は思ったものです。
私は社長の精神的負担を考えると当然だと思って同情をしていましたが、なかには不平不満が爆発した社員もおり、今までまとまりがあった従業員どおしの関係が悪くなってしまいました。
みんなで最後の受注の品の処理をしていた時も、中には仕事にまったく手をつけず、さぼっている者もいました。
そして社内の雰囲気は最悪のまま会社の玄関を閉める日が来てしまいました。
社長は最後のあいさつをした後、数日して行方をくらましてしまいあとは分からなくなりました。